私たちが生きる上で永遠に向き合っていくものの一つ、「時間」。
未来は見えず、過去は変えられない。
だからこそ尊く、より深みが増すというものだろう。
今回はそうした「時間」をうまく利用した物語を紹介する。
目次
・Memento 監督:クリストファー・ノーラン(2000)
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インターステラー、インセプション、ダンケルク 。
数々のヒット作を生み出すクリストファー・ノーラン監督作品のひとつであり、代表的な作品のひとつ。
「時間」を使った演出が多い彼だが、この作品ではまさにその「時間」が活きる衝撃的な作品となっている。
物語の主人公レナードは、殺された妻の復讐のために犯人を探していた。
妻の死後、彼は記憶が10分しか保てなくなっており、次々と消えていく記憶の中で犯人を追う。
これだけでもミステリー要素が豊富であり興味をそそられるものだが、この物語がただの復讐劇でない要素の一つとして映画自体の演出が挙げられる。
この映画はなんと、結末から物語が始まり、レナードの10分間の記憶が途切れるごとに更に前の10分間の物語に移っていくのだ。
つまり、10分間細切れの逆再生と言える。
観客は記憶の最初と最後の繋がりによる種明かしを10分間ごとに味わい、復讐劇の始まりへと戻っていく。
そして物語の最初に戻る時、もう一つの「ラスト」を知ることとなるのだ。
結末が分かっているからと侮れないのがこの作品。
鑑賞後、その物語の在り方は一変していることだろう。
・バタフライエフェクト 監督:エリック・ブレス/J・マッキー・グラバー(2004)
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タイムトリップ作品の金字塔の一つとも言うべき作品。「切ないハッピーエンド」のキャッチフレーズとして広く知られているが、内容はスリル溢れるサスペンスミステリーとなっている。
この物語の主人公、エヴァンも、短時間の記憶を失う悩みを抱えていた。
その対策として日記を書くことを勧められ、以後7歳から大学生に至るまで何冊もの日記を綴っている。
ある日、日記を読み返していたエヴァンは、日記に綴られてたその瞬間にタイムトリップ出来る力に目覚める。
それを知った彼はこれまでの過ちや後悔を消し去るため、想い人との幸せを掴み取るため、過去へと何度も舞い戻るのだった。
タイムマシンで恋人を死から救っても違う死が訪れる、というようなありがちなSFとは異なり、最初に謎としてあった彼の記憶が少しずつ種明かしされていくスリルやタイムトリップの度に大幅に変わっていく未来など、見所が多い。
最後に彼がどんな選択をするのか、ハッピーエンドはどの選択なのか。
最後の彼の選択は唐突であり、その意外性と切なさ、映画本編のスリルと暴力的で陰湿な過去とのギャップはある意味大きなカタルシスとも言えるだろう。
・TIME 監督:アンドリュー・ニコル(2011)
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この作品は上記2作と異なり、時間という概念を大いに利用した作品となっている。
科学進歩により人類は25歳から年を取らなくなり、代わりに「時間」が「通貨」となった世界。
手持ちの時間が0になった瞬間、人は命を落とすこととなっている。
貧困層であり、わずかな時間を給与として受け取りながら生活する主人公のウィル。
彼はある日、危ないところを助けた男から大量の時間(通貨)を受け取り、裕福層への仲間入りを果たす。
この制度によって母を亡くした彼は政府に復讐を誓っており、それを果たすために裕福層へと足を踏み入れるが…。
そこで彼は、隠された世界の仕組みについて知っていくこととなる。
時は金なり、ではなく、時は命となった世界。
新たな概念が当たり前となった世界、その設定を充分に活かす脚本によって、物語に夢中になること間違いなしだろう。
時間は親しみ深く、奥深い
生きていくうえで永遠に付きまとってくる、「時間」。
それは時に不条理で、愛しいもの。
これらの作品は時間についての考え方を深めてくれるとともに、「今」を生きていくことの大切さも同時に伝えてくれるだろう。
あなたが生きるその大切な時間の中、この作品と過ごすことがまたかけがえのない時間になることを願う。